左に右折

小説書きリハビリ用

とりあえず何か書き出してみる。

お題:洗濯

 

よく晴れた日、夏場のカラリとした雲一つない空、いかに私が普段は家事に勤しむことない堕落した生活を送っているとは言え、こんな日の洗濯はやはり多少なりともテンションがあがるものだ。ワンルームマンションのベランダに足を投げ出して、竿竹にひっかかるハンガーの群れにひとつ伸びをした。実に気分がいい。

「珍しいねぇ、ちゃんと休日に洗濯するなんて」

ひょっこりと後ろから顔をだしてきたその口からは紫煙が吐き出されて目の前の青が少し煙る。

「ちょっとぉ、やめてよ今洗ったばっかりなのに」

「1週間も洗濯物ためこむ女に言われたくないっていうね。ベランダに干しちゃったら煙草吸えないじゃん」

「吸わなくていいんだよ」

むっとして返しても素知らぬ顔で軽い返事。

まぁ、たしかにね、1週間溜め込んだ私も悪いとは思うんですよ。それでもちゃんとこうして洗濯してるだけ偉いと思うの。褒めてもよくってよっていう。

「しかしこんな天気いいとはね。ちゃんと朝から起きてよかったじゃん」

「でしょー?」

いつも朝起きられなくなる理由の半分くらいはこいつにあるんだけど、それはそれとして(残りの半分は自分のせいであることは自覚しているので責めたところで無駄なことはわかっている)しかしながらこんな晴れた日は、若者なら外にでてリアルを充実するんだろうけど、まったくそんな気分が湧いてこないあたり根が引きこもりなんだろうなぁ、と我ながら呆れる部分ではある。

「んで、朝から洗濯して、これからどうするんです?」

「んー、そうねぇ、とりあえずビール飲みたい」

「ダメ社会人だ」

「そのダメ社会人が好きな物好きはどこのどいつよ」

上を向けば煙草臭いくちが迎えてくれる。少しだけ舌先でその苦いとも煙いとも言い難い唇を舐めて離れる。

「煙草臭い」

「すんませんね」

2回目は私からその指先を絡めて唇に噛み付く、いつの間にか灰皿に押しつぶされた煙草は、消しきれていない先端からいまだ紫煙が漂っている。

「…布団いく?」

思いの外長くなったくちづけの合間にぼそぼそとつぶやかれる。

「…このあとお布団干すからだめ。ソファなら開いてるけど」

「あのソファ体重かける度にやたらギシギシ言うんだもんなー…」

「じゃぁ、布団干し終わるまではおあずけね」

いいお天気だから、おそらくそれほど時間はかからないだろうけれど、不服そうな顔は大人しくすごすごと引き下がっていく。

 

こんな天気のいい日に部屋に引きこもってこうしてだらだらするのも悪くはない。

 

 

end